何度も「目的」に立ち返る(1)


商業施設士の機関誌に載せていただいた内容を掲載しています。

 

初めてお店を出す人が、ショップ計画で欠かせないこと。ここを重視して立案するとショップがうまく動くと思われること。個人がショップ経営をする前に知っておきたい内容を考えていきます。


中でもショップの方向性を導き、ショップを長く続けられるかどうかに関わるのが、ビジネスの目的です。目的を中心にして、目的、目標、コンセプトのつながりを考えます。


1.はじめに

自分がなぜビジネスをするのか。多くの人は自分がビジネスをする目的は明確だと考えているようです。目的は明らかなので、そこは飛ばして速く具体的な商品計画や店舗計画を立てたい。そう考える方がいます。


しかし計画作業をはじめると、目的をあらためて吟味しないと具体策が立案出来ないことが少なくありません。そこに至って、自分のビジネスの目的が、思った以上に不明確だったことに気づきます。  

目的は思ったより手ごわいようです。


 

2.遅い競争の例から考える

 

◼︎「頭の体操」を参考に

そこで問題です。目的について頭を柔軟にして考えたいのです。そのためにビジネスから離れた「頭の体操」を参考にします。図表1の問題を考えてください。ぜひ考えてから答えを見てください。

◼︎息子の目的

答えは文章の終わりに(図表8)出しました。この問題を題材に目的にかかわる内容を考えていきます。


答えは分かりましたが、そもそも息子が馬の競争に参加する目的は何でしょうか。直接は馬の競争に勝つことです。しかしその目的は何でしょうか。全財産を得ることです。さらにその目的は何でしょうか。


問題には書いてありません。想像してみたいと思います。欲しいものを手に入れることかもしれません。


兄弟に対するライバル意識やプライドを守るためも考えられます。単に父の命令にしたがうという目的もあるかも知れません。最終的な目的は幸せになることかも知れません。そのためには生きて戻ることも目的になります。


そんな目的に対し目標は、自分の馬が遅く着くことです。自分自身が遅く着くことではありません。この目標に絞り込めれば、相手の馬を速く着かせる視点が生まれます。

 

しかし、相手の馬を速く着かせるアイデアをもらっても、現場ではすぐに馬の交換には至らなかったのではないでしょうか。


  ①乗馬が得意ではないので、馬を交換し速く着く競争をしたら負けそう。

  ②兄弟より体力があり、ゆっくり進む競争でも負けない自信がある。

  ③死んでもいいから、ゆっくり進むルールにしたがう。

  ④「遅く着いた方の馬」と父が言ったのは言葉のあやで、人馬一体でゴールするのが正

   しい。


兄弟が上記のような考えを持ったら、馬を交換する交渉は決裂したでしょう。

幸いなことに生きて戻ることを二人とも選びます。それが幸せだと考えたからでしょう。生きて幸せになる目的を選んだわけです。


 

◼︎目的、目標の整理

このクイズをよく考えると、目的と目標は単純につながっていません。馬が遅く着く目的、自分が勝つ目的の奥には財産を得る目的があるように、目的には目的があり、目的が複雑に絡み合っています。そしてどの目的を中心に考えるかで、目標の設定と行動が変わることが分かります。


ということは、目的や目標の関係を整理すれば、ビジネスは勝てるということではありませんか。